<私、今日初めてなんですよー。>
meとHerの初めての会話。
黒目の大きなMeが、<この子黒目でかいな、カラコンだな。> って思った。
毛先10cmくらいブリーチしたボブで明るく元気な子だな。 と言うのが第一印象。
何日か後、偶然MeがHerに教えることになった。
<在庫紹介した?>
<はいっ。>
<じゃあ、5Zoneのサイドバックはここなのね、 ちょっとシール貸してくれる?>とMe
シールを渡すHer
左手の親指の先に、カッターの切り傷があった。
柔らかそうな綺麗な指だった。
今とは違う香りがしたのを覚えている。
船に乗り込んで、最初の夜。
Meは、横で眠るHerを見ながら思い出していた。
それから1年半Meは、すべてを覚えている。
夏の暑い日。冬の寒い日。正月明け。
すべて鮮明に覚えている。
船に乗り込んで何日かたった頃、客に紛れ込んで食料をと。
すると、見た顔があった。
ノシナンテと亀ちゃんだった。
<何してんの?>
事細かく説明をするMe.
<いいよ。じゃあ私達の服を作ってよ。じゃあ、 食事は分けてあげる。>
取引成功。
Meは昔からとんでもない偶然運がある。本が書けるぐらい。
だから人生、流れに任せるところがある。
<よし、食料はパス。 後はイギリスの入国審査でHerが流暢なアメリカ英語を喋れるよ うにしないと。>
Meは、 アメリカ国籍のHerの偽造パスポートを手に入れたからだ。
それから毎日、Herは徹底的に発音の練習。
時間は1ヶ月ある。
後はカラコンと髪は染めればいい。
Herの性格は、ゼロか100。
はっきりしてる。やるとなればやる人と分かっていた。
Herは、毎日メイク、髪型を変え。いい香り。
Herの優しさはそうゆう所だ。
Meの創作を助けてくれる。
Meは、分かっていたけど言わなかったんだ。
なので時々Herの機嫌が悪くなる。
ノシナンテ、亀ちゃんの服を作ってる横で、 必死に発音の練習をしているHer.
<違う違う。カタカナ英語は忘れて。最初が全然違うんだ。>
<うん。分かった。>
ノシナンテJKT,亀ちゃんのパンツが出来上がった頃。
MeとHerが潜んでいた暗い部屋に偶然会った生地で作った。
Herの発音もまずまずになってきた。
こっからは会話の練習だ。
後は、リチャードのおみあげのシャツをやんないと。
<何でって、聞かないで。英語で分かって英語で答える。 訳したらダメだよ。>とMe
<うん。分かった。>
Meはバイリンガル。
英語の時の人格と日本語の時の性格は全然違う。
バイリンガルによくある話だ。
アメリカ人モードの時は陽気で楽しい人。
日本人モードの時はシャイで物静かな人になってしまう。
自分でも調節できない。
そういえば、リチャード、コリンもそうなるって言ってたな。
イギリスに着くまで後2日。
リチャードシャツが、完成した。 生地は客室のシーツのシャンブレー。
後二日でついにイングランド。
Herの英語も合格レベル。大丈夫、大丈夫。
2人で甲板に出た。
<寒いね>。
すごい満足感があった。Meは覚悟を決めた。