Dec 12, 2015

<これって、フェイスあります?>

<私、今日初めてなんですよー。>

meとHerの初めての会話。

黒目の大きなMeが、<この子黒目でかいな、カラコンだな。>って思った。

毛先10cmくらいブリーチしたボブで明るく元気な子だな。と言うのが第一印象。

何日か後、偶然MeがHerに教えることになった。

<在庫紹介した?>

<はいっ。>

<じゃあ、5Zoneのサイドバックはここなのね、ちょっとシール貸してくれる?>とMe


シールを渡すHer

左手の親指の先に、カッターの切り傷があった。

柔らかそうな綺麗な指だった。

今とは違う香りがしたのを覚えている。

船に乗り込んで、最初の夜。

Meは、横で眠るHerを見ながら思い出していた。

それから1年半Meは、すべてを覚えている。

夏の暑い日。冬の寒い日。正月明け。

すべて鮮明に覚えている。



船に乗り込んで何日かたった頃、客に紛れ込んで食料をと。

すると、見た顔があった。

ノシナンテと亀ちゃんだった。

<何してんの?>

事細かく説明をするMe.

<いいよ。じゃあ私達の服を作ってよ。じゃあ、食事は分けてあげる。>

取引成功。

Meは昔からとんでもない偶然運がある。本が書けるぐらい。

だから人生、流れに任せるところがある。

<よし、食料はパス。後はイギリスの入国審査でHerが流暢なアメリカ英語を喋れるようにしないと。>

Meは、アメリカ国籍のHerの偽造パスポートを手に入れたからだ。

それから毎日、Herは徹底的に発音の練習。

時間は1ヶ月ある。

後はカラコンと髪は染めればいい。

Herの性格は、ゼロか100。

はっきりしてる。やるとなればやる人と分かっていた。

Herは、毎日メイク、髪型を変え。いい香り。

Herの優しさはそうゆう所だ。

Meの創作を助けてくれる。  

Meは、分かっていたけど言わなかったんだ。

なので時々Herの機嫌が悪くなる。

ノシナンテ、亀ちゃんの服を作ってる横で、必死に発音の練習をしているHer.

<違う違う。カタカナ英語は忘れて。最初が全然違うんだ。>

<うん。分かった。>

ノシナンテJKT,亀ちゃんのパンツが出来上がった頃。

MeとHerが潜んでいた暗い部屋に偶然会った生地で作った。

Herの発音もまずまずになってきた。

こっからは会話の練習だ。

後は、リチャードのおみあげのシャツをやんないと。

<何でって、聞かないで。英語で分かって英語で答える。訳したらダメだよ。>とMe

<うん。分かった。>

Meはバイリンガル。

英語の時の人格と日本語の時の性格は全然違う。

バイリンガルによくある話だ。

アメリカ人モードの時は陽気で楽しい人。

日本人モードの時はシャイで物静かな人になってしまう。

自分でも調節できない。

そういえば、リチャード、コリンもそうなるって言ってたな。


イギリスに着くまで後2日。

リチャードシャツが、完成した。生地は客室のシーツのシャンブレー。

後二日でついにイングランド。

Herの英語も合格レベル。大丈夫、大丈夫。

2人で甲板に出た。

<寒いね>。

すごい満足感があった。Meは覚悟を決めた。